※パラレルに見えないことも無いが、そうでなくても読めるはずだと信じています。(笑)









のどかな昼下がり、という形容があまりにもぴったりすぎて自分でも驚いている。
目の前にはひたすら頁を捲る男。
さっきから再三攻撃をしかけているが、一切の返答がない。
…ただの屍のようだ。

退屈で仕方がない。

ぼんやりと、彼の手元を眺めていた。
相変わらず整った指だ。

「なぁ、お前さぁ」

ぱらぱらと本を捲る音が聞こえる。
この電子化の進んだご時勢に何でわざわざそんなアナログな物を、といつも思う。

「何で電子書籍にしないの」

「…それをアルトに言われるとは思わなかったな」

いかにも心外、という風に返してきた。

今までどれ程からかおうが突こうが、一向に本から顔を上げなかったのに、である。
どういう意味で言ったのかと問い詰めると、

「だって、お前アナログの代表格みたいな男が―――」

と言いかけて、其処で切れた。
自分で言おうとしたことがつぼにはまったらしい。
くすくすと人を馬鹿にしたように笑い続ける。

「おい、ちゃんと言え!」

相変わらず笑いが止まらないのか、片目が開いてない。

「いい加減にしないと眼鏡割るぞ…」

山折にして谷折にして、真ん中で真っ二つにするのもいいかもしれない。

「そいつは勘弁」

「で、結局何なんだよ」

ようやく笑いのつぼから開放されたのか、目元に溜めた涙を拭いながら

「ああ、簡単なことだよ」

指先の感覚が鈍るからだ、と事も無げに言う。
彼にとっての指先とは、要するに引き金を引く指のことだ。

読書ですら、その一環でしかないとでも言うのか。
愕然としたこちらを見遣って一瞬眉を寄せたかと思うと、

「まぁ、単に紙の感触が好きなだけなんだけどな」

と付け加えた。
ぺろっと出した舌がわざとらしい。

「どっちだよ」

俺が何を察したかを"察した"のだろう。
相変わらず勘の鋭い男だ。

「どっちだろうな」

困ったように笑ってごまかした。
そうして、逃げることに長けた男でもある。

「まぁ、良いけどな」

これ以上追及してくれるなというメッセージを受け取れないほど野暮ではないつもりだから。
彼が嫌だというのなら、聞かない。
そうでなければ、一緒に居ることさえ許してくれないだろう。

…我ながら微妙な距離感を維持してしまっているものだ。

「そうだなぁ…まぁ、アナクロ趣味な所は否定しないけど」

何のために付け足された言葉なのか分からずに首をかしげた。

「…馬鹿、察しろよそのくらい」

そうしてこちらが何のことやら分かるより先に、彼は本の世界に戻ってしまった。
ぱらぱらと、先ほどよりも速いペースで捲られる紙の音を聞きながら、俺は答えを探すしかない。

彼が読み終わるまでに、見つけられればいいのだが…



「日常的なあれこれ2」

           

 2010.12.28  勢いでサルベージ。2ってことは1が有ったんですね。  それは出してきてませんけども。  こう、新しく与えられるものがあると良くも悪くもむずむずしますね。