自分の思考には箍が嵌められていて、それが外れると 狂気が噴出する。
それが常人の解釈だとすれば、俺のは少し違う。

日頃の思考は常識という名の侵略者なのだ。
己の本質から乖離してしまった、不純物。

だから、狂ってるんじゃない。




これが 普通なんだ 悪いけど


サイコプラズマ

体の芯の部分に染みこんでいるのは一体何なのか自分でも分からない。 これが呪いや猛毒で無いことは確かだ。 確実に自分の一部であり、もしかすると全部かもしれない。 神経という神経を介して中枢から末端まで充溢した■■■ 飛びすさって躱す。 あれを当てられたら、ただじゃすまない。 気を張らねばならないのだが、それよりも何よりも、 楽しくて仕方ない。 「このいかれ野郎!」 銃弾の形がはっきりと分かるほどの集中。 相手の視線の揺らぎ一つ見逃さない。 ああ、何だろう。 喉の渇きを癒やすために人の生き血を啜る吸血鬼の気持ち。 戦慄き、震え、怯懦する他人のなんと愛おしいことか。 自分がその一段上に立ったかのように錯覚させられる。 意図的に、作為的に。 「さぁ、どうでしょうねぇ…」 ぶつりと右腕の表皮に亀裂が入る。 あ、やられた。 油断したつもりはないが、少しばかり上の空すぎただろうか。 反省、反省。 体の隅々まで予断無くコントロールする。 痛みも、快感も、信号としては同じだけ伝わる。 それを脳でブロックして、組み替えるのだ。 目視で分かるダメージは、わざわざ痛覚を騒がせるまでもないのだ。 「ん、っ…」 しかし、完全シャットダウン可能、という訳でも無い。 凄惨な見た目の割には随分と微弱な痛みを知覚する。 微かなざわめきは、どこか性的な快感に近い。 痛みに興奮するような体質だとは思いたくないが、しかし紛れのない事実でもある。 ―――ああほんと、最高だな! 体勢を立て直して武器を構えなおす。 命の削り合い、魂の取り合い。 「まぁ、なにがおかしいかは価値観の問題に帰結する訳だしねぇ」 袖の縫い直しも面倒だな、どうしよう。 新しいのを買おうか。 こないだ給料も出たしな――― 「もらった」 「悪いね、そう簡単にはあげないよ」 そう言えば一番好きなにおいが血のにおいだと思ったのはいつのことだったかな。 2010/11/13 シュタイン博士好き。